いまこそ学んでおきたい認知症ケア

もっと介護職の話をしよう もっと介護職の話をしよう

岐阜県の介護業界の未来を担うのは、
志を持った学生、現場で働くプロフェッショナルのみなさんの存在です。
そうした方々に着目し、あらゆる角度から、
介護の仕事と学びについて考えていきます。

お話を伺った方々

岐阜県福祉総合相談センター
所長 今津尚人さん(左)
リーダー 森本祥子さん(右)

高齢者や障がいのある人、子どもや女性に関する悩み事を総合的に受け付け、「福祉なんでも110番」での電話やFAX、メール対応のほか、福祉用具の展示や利用相談、図書やDVDなどによる情報提供を行っています。介護実習・普及センター事業として、県民向け講座、専門職研修も担当。認知症に関する研修も多数実施しています。

平成37年には
5人に1人の高齢者が認知症に

厚生労働省のホームページでは、認知症とは「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態」と説明されています。つまり認知症は病気であって、加齢により起こる単なる物忘れとは異なります。診断は専門医によって行う必要がありますが、DSM-IVという診断基準を用いるのが一般的です。日本では高齢化の進展にともない、今後さらに認知症高齢者の増加が予測され、平成37年には65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症と推計されています。

国では「認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けることができる社会」の実現をめざし、平成25~平成29年度の5ヵ年計画「オレンジプラン」を立てました。このプランでは、認知症の早期診断、早期対応のための適切なサービスの流れの確立や、地域での生活を支える医療・介護サービスの構築や人材育成、日常生活や家族の支援を強化すべく、「認知症地域支援推進員」や「認知症サポーター」の増員など7つの柱が掲げられています。なお、現在は基本的な施策は維持したまま新たな数値目標となった、「新オレンジプラン」が立てられています。

研修の見直しと新設により対応力を強化

岐阜県でもオレンジプランに基づき、認知症患者の支援を進めています。認知症疾患に関する早期診断・早期治療を行うとともに、地域の医療・福祉との連携を図ることを目的として、平成23年より「認知症疾患医療センター」を県内の7病院に設置。さらに平成29年に岐阜市民病院を加え現在は8箇所となっています。他にも、認知症サポート医や認知症介護実践者、認知症サポーターの養成、認知症予防のための「学習療法」の普及など、幅広く取り組んできました。
近年の認知症患者の増加を受け、厚生労働省では「認知症介護実践研修」のカリキュラムの見直しや、認知症介護の初任者や無資格者を対象とした「認知症介護基礎研修」を創設しました。認知症介護実践研修には、実務経験2年以上を対象とした実践者研修と、さらに上の実践リーダー研修があります。いずれも見直しによって研修期間が長くなり、より実践的な内容になりました。これらの研修は当センターでも実施していますが、認知症介護基礎研修は申込者が少なく、今以上の参加が望まれます。介護の人材不足もあり、各施設がなかなか研修に人を送り出せない状況ですので、今後の課題とも言えるでしょう。

認知症患者に寄り添いながら
共感する場面を

認知症は「尊厳を守るケア」が大切です。尊厳を守るということは、「権利を守る」こと。本人は、自身の人格や意向について理路整然とお話しできませんので、周りにいる家族や、専門職を含めた支援者がどれだけ代弁できるかということも、尊厳を守ることにつながるはずです。ひと口に認知症といっても、脳血管疾患によるものもあれば、アルツハイマー病に起因するもの、レビー小体型認知症など原因疾患はさまざま。それぞれの進行具合によって、症状や対応方法は異なります。本人の状況についての客観的な理解に加え、認知症患者の主体性を重視し、心理面でも理解をしながら継続的に支えていくことが求められます

認知症を完全に治すのは困難ですが、現状維持や症状の緩和は期待できます。症状が進行し時間軸が破綻している場合、認知症患者は支援を受けたあとの状態予測をすることが難しいかもしれません。まずは「今」の安心や心地よさを表現し、共感する場面を意図的にもつのもいいでしょう。少しでも認知症患者が楽しい時間を過ごせるよう、寄り添いながら、職員の皆さんも一緒に楽しむ気持ちをもつことも大切です。より実践的なケアをするときは、当センターの研修もご利用ください。

岐阜県福祉総合相談センターが開催している講習・研修例 岐阜県福祉総合相談センターが開催している講習・研修例

認知症介護基礎研修

岐阜県内の介護保険施設・事業所などに従事する介護職員に向けて実施。基礎的な知識や技術、考え方を習得できるもので、認知症介護に関する初任者や無資格者でも受けられます。1日(7時間)の研修です。

認知症介護実践者研修

岐阜県内の介護保険施設・事業所などに従事する介護職員で、認知症介護の実務経験2年以上の人が対象。認知症患者の身体介護に関して、より実践的な知識や技術の習得をめざします。講義6日(41時間)、自施設実習4週間の研修です。

認知症介護実践リーダー研修

介護保険施設・事業所などに従事する介護職員で、認知症介護業務に5年以上従事、かつ認知症介護実践者研修を終了し1年以上経過している人が対象。講義11日(79時間)、職場実習4週間の研修です。

岐阜県福祉総合相談センター

〒501-1173 岐阜市中2丁目470番地(岐阜県立寿楽苑2階)
研修

TEL 058-239-8063
FAX 058-239-8072

相談
福祉なんでも110番専用ダイヤル(9:00~17:00年中無休)

TEL 058-234-0110
FAX 058-234-0568

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