シニアを中心とした介護助手に高まる期待

もっと介護職の話をしよう もっと介護職の話をしよう

岐阜県の介護業界の未来を担うのは、
志を持った学生、現場で働くプロフェッショナルのみなさんの存在です。
そうした方々に着目し、あらゆる角度から、
介護の仕事と学びについて考えていきます。

お話を伺った方

岐阜県老人福祉施設協議会の研修委員長
社会福祉法人 杉和会 盲養護・養護老人ホーム 開設準備室
室長 窪田敏彦さん(中)
特別養護老人ホーム 優・悠・邑 和合 介護助手
武藤日出子さん(右)
大野登代子さん(左)

はじめに

短時間・補助業務で無理なく働ける助手から、介護施設への就労を促進

慢性的な人材不足に悩む介護現場で、労働意欲のある元気なシニアらに「介護助手」として就労してもらおうとする動きが広がっています。その狙いや効果について、実際に介護助手が活躍している施設を取材しました。
大垣市の特別養護老人ホーム「優・悠・邑 和合」で、介護助手として働く武藤日出子さん(57)と大野登代子さん(66)。同施設の職員である知人の紹介で介護助手の仕事を知り、応募しました。現在は週3、4回・1日3時間の時給制で勤務。利用者の洗濯物を畳んで居室へ届けたり、シーツ交換をしたり、利用者の話し相手になるといった仕事をしています。「忙しくて大変な時もありますが、利用者の方々とのふれあいが楽しく、やりがいを感じます」と笑顔で話します。
今年度、岐阜県では、元気なシニアらに介護助手としての就労を促す参入促進モデル事業を実施しました。介護助手の雇用に係る費用を県が負担するというもので、モデル事業が終わった後、各施設と本人が話し合って引き続き働くかどうかを決める仕組みです。岐阜県から業務委託を受けた県老人福祉施設協議会の研修委員長 窪田敏彦さんによると、モデル事業として8施設で40代から70代の男女計18名を介護助手に採用し、うち15名がモデル事業終了後も引き続いて働いているといいます。

介護助手の雇用を、新たな人材発掘やシニアの生きがいづくりのきっかけに

介護現場では身体介助やご家族との面談など、専門的な知識と経験が求められる業務のほかに、清掃や食事の配膳・片付け、洗濯、ベッドメイキング、見守り、レクリエーションの準備、車椅子の整備など、さまざまな周辺業務があります。実はこのことが介護職員の業務負担を増やす一因になっていて、結果的に労働環境の悪化や慢性的な人手不足を引き起こしている施設も少なくありません。そこで、近年ニーズが高まっているのが介護助手です。利用者様の身体に直接触れない補助業務を担う職種で、介護に関する資格や経験がなくてもできるため、シニアの方々も参入しやすいのが特徴です。
社会福祉法人 杉和会が運営する大垣市の特別養護老人ホーム「優・悠・邑 和合」では、2014年4月の開設当初から介護助手を短時間雇用で採用し、介護福祉士などの資格を持つ職員と役割分担する取り組みを行っています。その結果、介護福祉士らは身体介助やご家族との相談など、より高度な業務に注力することができ、介護サービスの質向上を追求する職場風土が醸成されました。一方、介護助手にとっては、活躍の場が創出されることで生きがいが得られ、健康寿命の延伸につながっているのではと考えています。
自法人の現状を見ても、施設における介護助手の導入は非常に良い取り組みだと思うのですが、現在のところ岐阜県内ではあまり普及していません。その背景には「資格を持っていないと採用されないのでは」「勤務時間が変則的で大変そう」「体力に自信がない」など、介護施設への就労にハードルを感じる人が多いということがあるようです。言い換えると、そうした不安を取り除くことができれば、介護助手の導入はもっと広がり、人材不足解消のキーファクターになりうるでしょう。
全国老人保健施設協会では、介護助手の導入を成功させるポイントとして、次の3つを挙げています。

  1. 雇用対象は元気なシニア(おおむね60歳以上)
  2. 補助業務に特化すること
  3. 週3日、1日3時間程度の短時間雇用

また、介護助手が行う業務をAからCの3クラスに分類していて、一人ひとりのペースに合わせて無理なくステップアップを促していくことも、人材の定着を図る上で大切だとしています。

  • 【Aクラス】
    一定程度の知識、技術、経験を要する業務
    例)認知症の方への対応、見守り、話し相手、趣味活動のお手伝いなど
  • 【Bクラス】
    短期間の研修で習得可能な知識や技術が必要となる業務
    例)ADL(日常生活動作)に応じたベッドメイキング、配膳時の注意、水分補給など
  • 【Cクラス】
    マニュアル化・パターン化が容易で、知識や技術がなくても行える業務
    例)居室の清掃、片づけ、備品の準備など

就労意欲があるアクティブシニアが現役世代をうまくサポートできる仕組みが整えば、「元気シニアが支える持続可能な超高齢化社会」の実現もそう遠くないかもしれません。(窪田敏彦さん)

介護助手として働く武藤日出子さん、大野登代子さんの声

「週3回、お洗濯や掃除の仕事なら私にもできそう」と思い、事前研修を受けて介護助手になりました。およそ100名分の利用者様の洗濯物を畳み、居室にお届けするだけでも、私にとっては結構な運動量ですね(笑)。自然な形で健康増進につながっているように感じます。それから、介護職員さんの身体介助や声かけの様子を間近で見ることができ、勉強になるのも介護施設で働く魅力です。将来、いざ家族に介護が必要になった時にも慌てず、対処することができそうです。(2016年9月入職 武藤日出子さん)

介護助手として働き始めて5年目。洗濯から始めて、掃除、シーツ交換という風に少しずつ仕事の幅を広げてきました。居室に伺うことが多いので、利用者様とはすっかり顔馴染みです。亡くなった私の両親やご近所さんと接するような感覚で、他愛ないおしゃべりをする時間が楽しいですね。週3、4回・1日3時間程度という無理のない働き方も気に入っています。趣味の卓球や家事などのプライベートと両立しながら、これからもがんばっていきたいと思います。(2015年12月入職 大野登代子さん)

介護助手の雇用に関する相談窓口 介護助手の雇用に関する相談窓口

岐阜県健康福祉部高齢福祉課 長寿社会推進係

TEL:058-272-8289(直通)

社会福祉法人 杉和会 (グレード1)
特別養護老人ホーム 優・悠・邑 和合

岐阜県大垣市和合本町2-114-1

TEL:0584-73-6110
FAX:0584-73-6112

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