もっと介護職の話をしよう もっと介護職の話をしよう

岐阜県の介護業界の未来を担うのは、
志を持った学生、現場で働くプロフェッショナルのみなさんの存在です。
そうした方々に着目し、あらゆる角度から、
介護の仕事と学びについて考えていきます。

お話を伺ったおふたり

公益財団法人 介護労働安定センター岐阜支所
岐阜支所長 小野木哲史さん(左)
啓発実践コーディネーター 西田弘伸さん(右)

介護サービス事業者に向けた雇用管理改善支援、介護職の養成研修や職業能力を高める研修の実施など、介護労働者の福祉の増進と魅力ある職場づくりの為の環境整備を地域密着型で取り組んでいます。運営スタッフは臨時職員を含め、7人。

雇用する側・される側を両輪で支援

介護労働安定センターは、1992年に厚生労働省所管の財団法人として設立されました。東京に本部、47都道府県に支部/支所を置き、介護労働者の福祉の増進と魅力ある職場づくりの為の環境整備を主目的としたさまざまな活動に取り組んでいます。活動のポイントは、雇用する側・雇用される側を両輪で支援していること。具体的には、「雇用する側」、つまり介護サービス事業者に対しては雇用管理の改善に関するサポートを、「雇用される側」、つまり介護職として働く方々には各種講習会や研修などを通じて職能開発支援を行っています。また、支部/支所ごとに地域の実情やニーズを踏まえた独自の活動を展開しているのも当センターの特徴。岐阜支所ではその一環として、「岐阜県介護人材育成事業者認定制度」の運営業務を受託し、今年度「取組宣言」をした105事業者のうち、48事業者に対して個別コンサルティング支援などを実施しています。

▲介護労働安定センター岐阜支所が企画運営を担当した 「認定制度普及促進説明会」の様子。

採用だけではなく、定着促進が大切

介護労働安定センターでは2002年度から毎年、「介護労働実態調査」を行っています。この結果を分析すると、介護労働現場の課題が見えてきます。よく介護業界は離職率が高いと言われますが、実は全産業と比べ、それほど大きな差異はありません。問題はふたつあって、ひとつは入職後3年未満で離職する割合が離職者全体の70%強を占めること。もうひとつは、離職率が「10%未満」にとどまっている事業所と「30%以上」の事業所との二極化が起きていること。これらのデータは、「職場の人間関係に問題があったため(全国25.4%、岐阜県21.4%/2015年度)」「自分の将来の見込みが立たなかったため(全国16.4%、岐阜県17.9%/2015年度)」「結婚・出産・妊娠・育児のため(全国14.1%、岐阜県19.0%/2015年度)」が上位に挙げられる「介護関係の仕事をやめた理由」のデータと相関関係があると思われます。つまり、介護職の定着率の低さは、働きやすさやキャリアアップの仕組みが不十分であることの影響が大きいのです。そこで、私たち介護労働安定センターの仕事として今後、介護職の専門性をより高める研修の充実や、小規模あるいは創業3年未満の事業者に対する労働環境およびキャリアパスの整備支援を強化していくことが重要と考えています。

▲「介護人材の発掘と養成の仕組みだけでは、定着は難しい。職員が勤務先で自分のキャリアパスを描けることが重要」と小野木さん。

介護業界は数少ない成長分野

急速に少子高齢化が進む日本にとって、介護人材不足が深刻な問題であることは間違いありません。岐阜県においても例外ではなく、2025年には県内で約7,100人の介護人材不足が見込まれています。人材が集まりにくいのは、介護の仕事に「労働内容に給料が見合わない」というマイナスイメージが強いことが一因。介護報酬改定を通じて賃金改善策が講じられているものの、十分とは言い難いのが現状です。ただ一方で、介護分野は日本における数少ない成長産業であることは確か。個々に工夫や努力を重ね、業界全体の底上げをめざす事業者もあって、その動きは少しずつ広がりを見せています。岐阜県においては今後、そうした前向きな事業者を認定・公表し、支援する「岐阜県介護人材育成事業者認定制度」が、働きやすい職場かどうかを測る指標のひとつになるでしょう。大切なのは、認定されることではなく、事業者が互いに切磋琢磨しながら、成長産業としての期待にふさわしい職場環境づくりに継続的に取り組むことです。もちろん、私たちもそのサポートを惜しみません。これからも関係機関と一枚岩となって、介護人材の量・質の向上に貢献していきたいと思います。

▲介護サービス事業者が職場環境を自己点検できるチェックリストや、悩みへの対応案をまとめたガイドブックなどを発行。

▲「岐阜県介護人材育成事業者認定制度に取組む事業者がもっと増えれば、介護サービスの質向上にもつながるはず」と西田さん。

介護労働安定センターが開催している講習・研修例

1.介護労働講習(実務者研修含む)

岐阜労働局及びハローワークと連携し、介護分野で働くことを志す方に無償で実施する職業訓練講習です。主なカリキュラムは、実務者研修科目(450時間)と合わせて、医療的ケア(演習)、現場実習、就職支援等を加えた625時間で構成されています。講習課程を修了すると実務者研修修了資格を取得できます。特に未経験、無資格の方でも基本知識と介護技術を身に付けられることを基準にしています。
※講習対象者の要件は以下のとおりです。
  • ハローワークに求職者登録のうえ、雇用保険受給資格者で、且つ該当ハローワークの所長から職業訓練等の受講指示を受けた方
  • 介護分野への就職希望者で、講習の全日程を欠席なく受講できる方(概ねの講習期間:6月〜11月/105日間の通学方式)
詳しくはこちら

2.ケアサポート講習

介護サービス事業者などが、職員研修や勉強会の一環として活用できる出張講習(有料講習です)。依頼先のニーズに合わせ研修プログラムをオーダーメイドで組み立て、提案・実施します。2016年度は岐阜県内で6事業所から申し込みがありました。 ※主な研修テーマ事例 「移乗時の介護」「介護記録の書き方」「認知症の理解と対応」「緊急時の介護(症例別)」「ターミナル・ケア」「災害介護」など 詳しくはこちら

3.介護労働者雇用管理責任者講習

介護分野の事業所において、働きやすい職場づくりを自主的に進めていくため、雇用管理に責任を有する方を対象に雇用管理について学んでいただく講習。受講料は無料です。

※主な内容

総合コース:雇用管理の基本事項全般を学ぶコース

専門コース:人事管理、賃金管理、労働時間管理、安全衛生・健康管理の各分野を専門的に学ぶコース

詳しくはこちら

公益財団法人
介護労働安定センター 岐阜支所

〒500-8113 岐阜市金園町1-3-3 クリスタルビル2F D室

TEL 058-264-6846
FAX 058-264-6848

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